新型コロナウイルスの流行から早一年、われわれの日常生活は一変した。ふりかえってみると、Withコロナ――COVID-19との共存・共生――がもたらしたものとは、「当たり前」というわれわれの感覚/認識の変化だったのかもしれない。
Author - naito
インドネシアの新型コロナウィルス感染症──都市における深刻な感染状況とワクチン接種の進展──
インドネシア国内のコロナ感染者は、2021年4月15日時点で158万9300人足らず、回復者143万8000人、亡くなった方が4万3000人であると政府によって発表された。うちジャカルタ首都特別州は39万6000名で全体の24.9%を占める。
フォトエッセイ ロックダウン中のヤンゴン
数か月間の外出禁止措置(セミ・ロックダウン)の後、ヤンゴン管区域政府 (Yangon Region Government) は新型コロナウィルス感染拡大を封じ込めるため、2020年9月21日に2度目の全面的都市封鎖を命じ、700万人以上が自宅に閉じ込められることとなった。
誰もが助かるまで社会全体の安全はない──大メコン圏(GMS)内の移住とCOVID-19──
1990年代の半ばに東南アジアのメコン川流域6か国が参加した地域協力事業は、国家間および農村・都市間の経済回廊の開発を通じて同地域の経済発展を強化し、貧困を削減することを目的としていた。これによって地域間の結びつきが強化された結果、6か国間の国境を越えたモビリティ(移動性)が著しく
COVID-19と治安部門ガバナンス --東南アジアの議論から日本が学ぶこと--
本稿の目的は、東南アジアの新興国やポスト紛争国の問題と捉えられがちな治安部門改革(Security Sector Reform:SSR)や治安部門ガバナンス(Security Sector Governance:SSG)を、日本の課題として論じることである。
資本主義の拡大、COVID-19とパプア人の苦しみ
パプア州政府は、インドネシアにおけるパンデミック発生初期から迅速に「地域規制」を実施した数少ない自治体の1つである。州当局は2020年3月26日から6月4日まで、(日常生活に不可欠な業務のための貨物運送を除いて)すべての輸送路を閉鎖し、ソーシャル・ディスタンス政策を強化して域内外への移動を制限する決定を下した。
問題山積のインドネシアの新型コロナウィルス対応
インドネシアはこれまでのところ、コロナウィルスが引き起こしたパンデミックに効果的に対応できておらず、シンガポール、マレーシア、タイ、ベトナムなどの近隣諸国と比較しても危機的な状況が続いている(ASEAN Briefing 2020)。
フィリピンのCOVID-19対策──国家の力の限界──
新型コロナウィルス感染症がもたらしたのは、公衆衛生上の危機にとどまらない。コロナは経済・社会のデジタル化を加速させ、国際協力の脆さをさらけ出し、覇権を争う米中二大国の対立を激化させ、世界中の国家の能力や本質を浮き彫りにした。
COVID-19と社会不安の二重の打撃を受ける香港——一国二制度、対外関係と経済不況をめぐって
2019年12月31日、中国政府から世界保健機構(WHO)に、中国湖北省の省都、武漢で「原因不明の肺炎」が発生したとの報告が入った。
インドネシア経済は新型コロナウィルス感染症勝ち組に!?
新型コロナウィルス感染症問題はインドネシア経済を直撃している。ジャカルタでは、4月10日から実施されている大規模ソーシャルディスタンス政策(PSBB)によって、オフィスへの通勤が原則禁止された。また、ジャカルタの街にあふれていた緑色のゴージェックオートバイ
歴史的な視点からみたラテンアメリカにおける疫病とブラジルでのクロロキシン
20世紀のラテンアメリカにおける疫病に関する歴史研究には、疫病に対する政府の姿勢の根底に流れる考えを分析したものがあり、そうした研究は、ラテンアメリカにおける新型コロナウイルスに対する政策を理解するうえで重要である(Cueto & Palmer 2016)。根底に流れる考えとは、「生き残りの文化」という概念に集約できる。
東南アジアにおける新型コロナウイルスの突然変異と拡散──今後のワクチンの行方──
新型コロナウイルス感染症によって引き起こされた世紀に一度の壊滅的パンデミックから、世界規模での画期的なワクチン開発が始まった。このような規模の取り組みは現代医学史上、例を見ない。
パンデミックに襲われた日本の医療・介護現場で働く東南アジア出身労働者 ―─その日常生活と意識―─
日本における新型コロナウイルスの感染拡大は、諸外国同様、医療機関や高齢者介護施設を直撃した。今年5月初めまでに日本では計250件の集団感染(クラスター感染)が起きた。そのうち85件は医療機関、40件は高齢者施設で起きたものである(毎日新聞、2020年5月13日)。これに伴って、多くの入所者や入院患者が亡くなった。NHKの調べでは、4月末までに全国各地の高齢...
歴史的視点からみたラテンアメリカにおける疫病とブラジルでのクロロキン
20世紀のラテンアメリカにおける疫病に関する歴史研究には、疫病に対する政府の姿勢の根底に流れる考えを分析したものがある。そうした研究は、現在のラテンアメリカにおける新型コロナウイルスに対する政策を理解するうえで重要だ
ジャカルタにおける新しい日常の経験 ──住民組織のロックダウン──
2020年5月7日、ジョコ・ウィドド大統領(以下、ジョコウィ)は、新型コロナ感染症との今後の向き合い方に関する声明を発表した。声明の中でジョコウィ大統領は、これからは新型コロナ感染症と共に生きていく必要があると国民に呼びかけていた。
新型コロナウイルス──カンボジアの事例──
カンボジアにおいて新型コロナウイルスの1人目の感染者が確認されたのは、今から4カ月ほど前の1月27日のことであった。陽性が確認されたのは1月23日に中国武漢からカンボジア南部の都市シアヌークヴィルへの直行便でカンボジアに入国した中国人であった。
パンデミック下のマレーシア --コロナ禍に垣間見た強さと、ちらつく脆さ--
不測の危機が訪れたときに、備えていた性質があきらかになるのは、人も国も同じなのかもしれない。このコラムでは、まず5月半ばまでのコロナ禍の状況を概観し、続いて5つのキーワードを挙げながら、これまでマレーシアがみせた強さと、これから露わになるかもしれない弱さを語ってみたい。
人々の連帯──コロナ禍がジャカルタの労働者にもたらしたもの──
インドネシアでは大規模社会制限(Pembatasan Sosial Berskala Besar、以後PSBB)が実施され、労働者はより不安定な状況におかれることとなった。国民の移動や活動が一時的に停止される中、インドネシア議会は問題化している「雇用創出に関する制度一括改正法(オムニバス法)」草案の審議開始を主張した。
フィリピン「コロナウィルス劇場」としてのテレビ局の放送停止
コロナウィルスによるパンデミックは、フィリピンの放送事業に対して抜本的な事業縮小を余儀なく迫った。政府による「強化されたコミュニティ隔離措置」(リスクの高い場所で実施される最も厳しい検疫)が発効する数日前の2020年3月16日、フィリピン最大のテレビネットワーク局ABS...
邦人高齢ロングステイヤーからみた北部タイの新型コロナ・ウィルス体験
タイ国の新型コロナ・ウィルスの発生は、1月13日に中国武漢市出身の女性がスワンナプーム国際空港で入国時の検疫で見つかったのが最初であった。1月末迄の患者の大半が、中国からの旅行者で、合計19人ほどであった。2月10日...
シンガポールにおけるコロナウィルス──絡み合う利害関係に立ち向かう──
シンガポール政府が官僚主義的効率性を徹底していることは有名である。2020年1月、いまだ同国で最初のコロナウィルス感染者が検出される前であったにもかかわらず、政府は、今では世界の「ニュー・ノーマル」となったウィルス封じ込め計画を実施するために多機関から成る対策本部を結成した。
パンデミックのただ中で、殺人、逮捕、そして自由の取り締まりについて
マニラ首都圏では封鎖8週目に入り、検問所を突破しようとした男が警察に殺害され、ドゥテルテ大統領に批判的な意見をソーシャルメディアに投稿したネチズンが取り締まりの対象となった。公衆衛生上の緊急事態において、政府が鉄拳を示した形だ。
プラユットの二つのジレンマとタイの新型コロナウイルス感染症
キーワード: タイ, 新型コロナウイルス感染症, 官僚国家, プラユット・チャンオチャ, 非常事態宣言 タイでの新型コロナウイルス感染症をめぐる状況は、ミニチュア版タイ政治の風刺画といった様子だ。タイ人は統治を選択する際、二つの悪、選挙政党(the electorate party)と官僚政党(the bureaucratic...
コロナウイルス感染症時代の権力──マレーシア「MCO」についての記録と考察──
マレーシア政府は、全国的なロックダウンとみなされている大規模活動制限令(Movement Control Order、以後、MCO)を2020年3月18日から施行した。MCOは5月12日まで延長され、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックを国内で封じ込める包括的戦略の柱となってきた。
ラオスにおける新型コロナウィルス対策 --「成功」の背景と今後の展望--
COVID-19対策特別委員会の会見は,「敬愛する皆様」という呼びかけで始まる。3月末から毎日続く会見は複数のフェイスブックでライブ中継され,何千人もの視聴者を集める。内容は国内の検査状況と感染者情報,隔離状況等ほぼ型通りだが,新たな措置・法令に関する説明や個別セクターの報告が盛り込まれることもある。
防疫体制と草の根保守―― 北部ミンダナオからの視点
本稿の英語版の公開から約1ヶ月が経過し、7月になったが、世界中から報告される新型コロナウィルス感染者の数は増え続けている。2020年1月頃からの「史料」を読み返してみると、顛末の奇妙さや変化の速さに驚かされる。
ドゥテルテの COVID-19──フィリピン大統領の権威と矛盾──
コロナウイルスのパンデミックが、フィリピンと世界に荒れ狂う中、ロドリゴ・R・ドゥテルテ大統領は、フィリピン最大の島、ルソン島に戒厳令を敷き、隔離措置の違反者に規律を叩きこむと言って脅した。「射殺しろ」。大統領は事前に軍と警察に対して、そうテレビ演説で指示した。「殺すんだ。大混乱を引き起こすなら、違反者を葬ってやるまでだ」。
ウイルスの時代に生きる──タイの記録──
紙面上では、タイの状況は東南アジアの多くの近隣諸国ほど厳しくはない。4月28日現在、新型コロナウイルスの感染者数は3,000人をわずかに下回るに留まり、死者数も54人だ。中国を除き世界で最初に感染を報告した国であるにもかかわらず、タイが感染の大流行を防いだことについては、プラユット・チャンオチャ政権が飽きもせずに繰り返し続けている。
新型コロナウイルス -ペルーの事例-
Keywords: 新型コロナウイルス, ペルー, 非常事態宣言, パンデミック, 外出制限 ES(Original) ペルーで最初の新型コロナウイルスの感染が確認されたのは、今年の3月6日である。スペインでの休暇から帰国した、ラタム (LATAM)...
コメのATMから援助の手を差し伸べる
ベトナムにおける新型コロナウイルスの症例数265件、死者数ゼロという数字は、世界の他の国よりもはるかに低い。しかしながら、さらなる感染拡大を防ぐため、政府は社会的距離を実施し、事実上、多くの小規模事業を営業停止にした。