1990年代の半ばに東南アジアのメコン川流域6か国が参加した地域協力事業は、国家間および農村・都市間の経済回廊の開発を通じて同地域の経済発展を強化し、貧困を削減することを目的としていた。これによって地域間の結びつきが強化された結果、6か国間の国境を越えたモビリティ(移動性)が著しく高まり、少なくとも300万から500万人の移民労働者に就業機会がもたらされ、同地域の社会・経済のダイナミクスは一変した。タイは大メコン圏(Greater Mekong Sub-region、以下GMS)最大の移民受け入れ国で、GMS内の移民全体の60%がタイに集まってくる。これに次ぐのがベトナム、中華人民共和国の雲南省および広西チワン族自治区(広西)で、タイとともにカンボジア、ラオス人民共和国、ミャンマーからの移民を受け入れている(ADB 2013:vii)。移民を送り出し、また引き寄せる要因はいくつかあり、同地域内での移動を活発にしている。それは例えば、移住すれば暮らしが良くなるという見込みや、不平等な社会や経済の構造、国家間あるいは国内での農村・都市間の格差、抜け穴だらけの国境や、不正入国を助長する取締りの緩さなどだ。この結果、GMS内の移民労働者の大半が非正規労働者として非熟練、低賃金の職に就く事態となっている。

国際移住機関(International Organization for Migration、以下IOM)は正規移住を、公認のルートを通して行われる移住と定義する。往来が最も多い日には、最高で3万もの人々がタイとその他のGMS域内国の国境を行き来するが、大半は適切な入国書類を持たず、農業や建設業、漁業に従事していると推定されている。数々の業種の中でこれらの業種が非正規移民を雇用する傾向がより高いのは、仕事がきつく、自国民には受け入れられにくい低賃金であっても、社会的・経済的格差を逃れようとする移民を惹きつけるには十分なためだ(ADB 2013:9)。非正規移民の雇用に対する厳しい取り締まりがないため、地続きの国境越えはさらに抜け穴だらけとなり、移民、特に女性の移民の密入国や人身売買が容易となる。GMS内で移住する女性の数は年々増加しており、これが同地域の経済発展に大きく貢献している。だが、女性は酷使されたり搾取されたりするリスクが男性の移民よりも高い。これは女性の交渉力が低く、ジェンダーに基づく差別があり、識字率が低いことが原因だ(ADB 2013:24)。

 

移住と健康上の脆弱性

GMS内の移民は、その法的地位(正規、非正規、密入国や人身売買による移住)にかかわらず、健康上のリスクに対してひどく脆弱だ。移住そのものが移民たちの健康を左右する要因になる。というのは、移動し、生活を送り、労働に従事する環境が、移民たちに身体的、精神的、あるいは公衆衛生上、社会福祉上の重大なリスクをもたらすからだ。移民が医療サービスを利用できない主な理由は、法的地位や厳しい移民政策・雇用政策、低識字率と状況に対する意識の低さのためであり、これらが自分自身を守る能力を大いに損ねている(McMichael and Healy 2017)。医療サービスを利用できたとしても、ほとんどの移民が、国外退去や医療従事者の外国人嫌いや差別的な態度を恐れ、言語や文化、ジェンダーの壁を案じて、サービスの利用を避ける道を選んでいる。危険で搾取的な労働環境や過密な住宅、不十分な社会保障制度が、暴力や性的搾取、社会的排除、家族との離別や反移民感情など、心身の健康、性的な健康、行動上の健康を低下させるすべての要因を生み出している。繰り返して言うが、移民の置かれた環境が彼らを病気にかかりやすくしているのであって、彼ら自身が原因なのではない(IOM 2015)。

一般的に、移住と感染症の流入には関係があると思われているが、両者の間に理路整然とした明確な関連性はない。感染症が主に貧困の程度と関連していることを示す証拠もある(WHO n.d.)。移民の大半は、様々な経路と交通手段を使い、多くの乗り換え地点や町を通過しながら、長くて消耗する旅を大した元手も持たずに始める(IOM 2016:4)。目的地に到着すれば、彼らのほとんどが貧しい環境で暮らし、社会の主流から取り残され、自ずと感染症にかかる重大なリスクを抱え込んでいることがわかる。また、交通機関がグローバルにつながる今の時代、人々(特にビジネスパーソンや観光客などの短期旅行者)は世界中をより素早く移動し、新型疾患の急激な拡散と伝染をもたらし、無防備で医療サービスが届きにくい移民コミュニティにクラスターを持ち込むこともある。現在進行中のコロナ禍の下ではこのような状況がみられる。

 

移住とCOVID-19パンデミック

現在までに、新型コロナウイルス感染症は世界で2,100万人以上に感染し、78万4,000人以上の命を奪ってきた(2020年8月20日現在)。この危機の未曾有の影響は経済や医療、政治、そして人権にも及び、多くの国々では、特に最も弱い立場にある周縁化された人たちの間で既存の格差を拡大させている。今回のパンデミックから、病気が国境などお構いなしであり、国境での対策のみでは病気のまん延は防げないことが明らかとなった。感染症が発生し、まん延した人通りの多い商業・観光ルート沿いには、以前から多くの移民労働者や外国人留学生、亡命希望者や難民が住んでいた。コロナウイルス感染者数が次第にアジア・太平洋地域の国々で増加するに従い、GMSの移民受け入れ国は、海外渡航の一時停止や国境の閉鎖、ビザや入国に必要な条件の変更、さらに国内向けには強制的なロックダウンを課すなど、思い切った手段を講じた。そうすることで新型コロナウイルス(SARS-COV-2)の感染が自分たちの地域に侵入する機会を減らし、医療システムが対処できるよう時間を確保しようとしたのだ。ところが、一連の移動抑制策により、何百万もの人命が危険にさらされる事態になった(IOM Policy Paper 2020:1-2)。これらの厳重な公衆衛生対策は、国境を越える移動をくい止めるどころか、かえって急激な移動を引き起こした。移民(特に国内移住者)が感染を恐れ、あるいは生活手段を失うなどロックダウンによる想定外の影響から逃れようとして、感染拡大地域を立ち去ったためだ。対策によって移動が止まった地域では、移民たちは生活と仕事と本国送還の限られた選択肢の中で立ち往生することとなった。

 

現地の状況

タイ王国政府は、2020年3月26日の非常事態宣言発令に続いて夜間外出禁止令を課し、首都といくつかの県に対する部分的なロックダウンを行い、陸海空の大部分の国境を封鎖してコロナの感染を最小限に抑えようとした。この結果、一方では何万人もの出稼ぎ労働者が混雑したバスに乗って出身地に帰ったことで急な移動が生じ、新たにコロナのクラスターがまかれる危険が高まった。この危険が特に懸念されるのが、カンボジアやラオス人民共和国、ミャンマーなど出稼ぎ労働者たちの故郷がある大部分の農村地域で、そのような地域ではコロナ感染者が出たとしても監視や検査、治療が極めて困難なのだ。そこで国境を管理する職員たちは世界保健機構(WHO)やIOMと協力し、感染率が低く抑えられることを願いながら、国境を通過する大勢の人々に物理的距離の確保や、手洗い、マスクの使用を徹底させ、コロナウイルス感染症に関する重要情報の提供を行ってきた。他方では、多くの移民が職を解雇された後にタイで立ち往生するはめになり、情報や支援も限られ、彼らの基本的サービスの迅速な利用に悪影響が及んでいる(IOM Thailand COVID-19 Appeal 2020:1-2)。

故郷に帰るために国境越えを待つ移民。2020年6月メーソートの国境にて(写真提供:IOM)

数か月が経過し、感染速度が落ち始めたところで、タイは工場や企業活動を再開させた。しかし、入国後14日間の隔離義務の費用が雇用主負担となったため、多くの企業は移民労働者の新規契約や呼び戻しを思いとどまるようになり、これがタイとミャンマー、タイとカンボジアの非公式な国境を通じた入国、あるいは密入国への道を開くこととなった。国境地帯に暮らす移民労働者の子供たちにも、入国地点の閉鎖や隔離の実施に伴う負の影響があった。子供たちの多くがタイ側の学校に在籍し、非常事態宣言が出るまでは、毎日、国境を越えて学校に通っていたからだ。また、国境が閉鎖される前は、カンボジアやラオス、ミャンマーから大勢の人々が、より良い医療サービスを求めて国境を越え、タイに来ていた。現在、重症患者のみ何とか国境を越えて紹介病院に行くことを許されているが、これには県知事の認可が必要で、国境越えの地点によってはこの処理に1週間以上かかる所もある。

 

移民労働者へのパンデミックの影響

概して、移民、あるいは移動する人々は現在、三重の危機に直面している。一つ目は前例のない健康への危機で、これは移民たちが基本的医療サービスを利用する機会が損なわれたことで悪化した。それに、コロナ関連のどのサービスが利用できるかについての移民たちの認識も欠けている。この原因には、識字率の低さや健康志向の弱さ、国家緊急対応計画の対象から移民が除外されていること、また彼らが逮捕や国外退去、非難や差別を恐れていることもあるだろう。このことは移民の生命、ひいてはホスト社会をも脅威にさらす。大部分の移民は、その法的地位にかかわらず最貧層に属し、彼らが暮らす過密な環境では物理的距離の確保は現実的に不可能であり、水や衛生関連のまともなインフラはないか、あったとしても限られている(IOM Thailand COVID-19 Appeal 2020:2)。このような事情は、コロナ対策で義務付けられた、感染防止のためのリスク・コミュニケーションをすべて覆してしまう。食糧不安や栄養失調の高まりも懸念されるが、これは食糧不足によるものというより、絶えず行われる移動規制や、収入、あるいは仕送りが絶たれたことによるものだ。仮設住宅やシェルター、スラムで暮らす難民や国内避難民(IDPs)、非正規労働者には行政サービスや民間の支援が届きにくい。食糧や支援物資の配給は現在、移動規制や物理的距離の確保などの措置によって、さらなる行き詰まりに直面している(The World Bank 2020)。

トラックが並ぶメーソートの国境。ミャンマーに物資を送る(2020年6月、写真提供:IOM)

二つ目と三つ目は、移民たちが安全と社会・経済の危機に同時に直面していることだ。戦争や迫害を逃れようとする亡命希望者に対し、難民収容所の利用機会に制限をかけ、拘束したり、国外退去させたり、国境から強制的に帰還させようとする国も少なくない。このような行為は感染防止対策の名の下で認められてはいるが、ウイルス保有者としての「外人」、「よそ者」といった外国人嫌いの表現をかえって助長し、暴力や社会的排除を呼び、サービスを利用する機会を減らし、企業の不買運動や差別的な移動規制や隔離政策をもたらしている。厳格なロックダウン措置が緩和されても、経済の停滞により差別や外国人嫌い、反移民感情がますます表面化するようになった(IOM Press Release 2020)。失業の増加や生計手段の喪失、賃金の引き下げや不払いは、移民労働者、特に日給に大きく依存する非熟練の非正規労働者に著しい影響を及ぼしている。2020年末までに、世界中でさらに1,100億米ドル近い送金の減少が予測される。故郷への送金は、家計を切り盛りするために限られた国民福祉制度に頼らざるを得ない多くの世帯やコミュニティにとって死活問題なのだ(ILO 2020:2)。

 

移民女性はCOVID-19の影響をまともに受ける

現在の状況下で、女性移民労働者はあらゆる面で最も強い打撃を受けている。低賃金で不安定な仕事や、現場の看護師や掃除人、洗濯人など不可欠な業種で働く女性たちは、コロナウイルスにさらされる危険と隣り合わせだ。既存のジェンダーに基づく不平等や、厳しい移住政策、不安定な労働形態などの問題もあるが、現在、女性移民労働者のとりうる選択肢は雇用側の経費削減を受けてさらに幅が狭められており、学校閉鎖や帰郷の結果、子供などの扶養家族の面倒を見なくてはならない状況にも直面している(UN Women 2020:1)。その上、宿泊施設や職場、隔離施設、あるいは家庭における女性への暴力が危険なレベルに達し、過去数十年に女性の労働や個人の権利が大きく前進したことを覆す事態となっている。移民労働者のほとんどが頼みとしているジェンダーに基づく暴力を扱う支援サービスは、その多くがロックダウンの発表以来、オンラインと電話のみのスタイルに縮小されたか、閉鎖されてしまった。当然、彼女たちは完全に無防備となり、弱い立場に取り残されることとなった。

 

解決に向けて——移民の包摂と多分野からのアプローチ

このような、移民労働者に対する意図せざる影響は、社会、経済、公衆衛生全般にも思いがけない影響を及ぼしている。移民そのものは健康を脅かす存在ではなく、むしろ多様な移民に新型コロナウイルスの検査や治療サービスを提供できない体制が、社会に対する脅威となっている。今日のグローバル化した世界で活動する上で、モビリティは現実問題として必要不可欠な条件だ。各国政府が国境を開き経済を再開させようと準備を進めている以上、今後も感染率の高い地域と低い地域の間での往来が行われる事態に変化はみられないだろう。移民を社会の一員として制度の対象に含めるなら、移民とホスト社会の安全は護られる。住民の一部である彼らを除外すれば、感染率の上昇を抑えようとする国や地方自治体のあらゆる努力を棒に振る結末となるだろう。

アランヤプラテートの国境検問所(2020年7月、写真提供:IOM)

また、移民の包摂は多分野にわたって行われる必要がある。国家緊急対応計画は、感染防止や検査、治療、監視、緩和などのコロナ対策の対象として、言語的、文化的に適切な方法で移民たちを支援する活動に取り組む必要がある。受け入れ社会は移民に対する悪いイメージや差別問題に対処し、移民がサービスを求めやすくなるよう支えていかねばならない。幅広い政府の関連部門や機関が協力することは、仕事を失った移民たちが被る社会的・経済的影響に対処する上で極めて重要だ。また公衆衛生対策がモビリティや緩和政策にもたらす影響を見守ることは、対策の効果を評価するためだけでなく、新型コロナの時代により優れた移住管理を行う上でも必要だ。

IOMは新型コロナの対応に移住政策を組み込む際の、4つの重要な検討事項を強調する。一つ目は、移住のダイナミクス、移住に伴う保健医療やモビリティの管理が、国境を越えるものであると理解すること。対策は入国関連の措置や規制などの拠点的なものに止めるべきではない。移住のパターンに注目し、感染拡大地域や人々が行き交う場所(国境の市場や屋台など)、地域的なリスク、健康上のリスクをマッピングし、現在の医療態勢で不足している点を洗い出し、移民にサービスを拡充するために必要な業務を検討することは重要な第一歩だ(IOM 2016:4-5)。このことは医療介入のルール作りや地域に根差した活動の規模の拡大、国境を越えた連携の強化に役立ち、結果として医療制度を強化することにつながるだろう。

二つ目は、国の様々な省庁や協力機関の間に多分野にわたる強力な協力体制を築き、国内避難民や旅行者、外国人居住者、学生、外交官を含む全ての移動人口が、確実に新型コロナ対策の対象に含まれるようにすることだ。各機関のサービスの差異や相乗効果を明らかにすれば、閉鎖がもたらす事態に備えて打ち出された社会福祉支援を最大限に利用することが可能となるだろう。現在、移民はこの支援の対象外となっている。移民は経済回復に欠かせない存在であり、彼らを現金給付や保険制度、送金サービスの対象に含め、彼らの労働上の衛生と安全を保障することを強く求める必要がある。

三つ目は移民医療政策に関して、既存の計画を活用し、政府が人々の移動に沿った新型コロナ対策を実施できるようにすることだ。移民医療が常に目指してきたのは、世界的、地域的なプラットフォームであり、その例は、安全で秩序ある正規移住のためのグローバル・コンパクト(GCM)や持続可能な開発目標(SDGs)、2019年にWHOの世界保健総会で採択された難民と移民の健康増進のための世界行動計画、ASEAN移民労働者の権利の保護と伸長に関する法制度および政策、その他にも、世界結核終息戦略(the End TB Strategy)や、国連モビリティとHIV/AIDSに関する合同イニシアチブ(JUNIMA)など、いくつかの特定疾患対策計画に見られる。

最後に重要なものとして推奨しておきたいのが、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(Universal Health Coverage、以下UHC。国民皆保険など、適切な費用の身近な医療)だ。健康保険が真に「万人のもの」となるには、その対象に移民が含まれなくてはならない。UHCは医療の対象を国籍や市民権を超え、国境を越えるものと再定義している。この世界的に合意された目標は、移民労働者や非正規移民を含む、ある地域内の全ての個人を確実に医療保険の対象とし、彼らが一切差別されることなくコロナ関連のサービスを受けられるようにし、利用者を金銭的リスクから守り、自己負担の支払いを減らそうとするものだ(Guinto et al. 2015)。タイの包括的な医療政策は、不法移民も含む全ての人々を対象としていて、法的地位にかかわらずUHC目標を達成している。だが、現状の急変によって、タイを含む各国政府は協定や政策、監視協定、公衆衛生対策などを適応させようと苦戦中で、UHCに向けた取り組みが放置され、後退する可能性がある。そこで、UHC計画がパンデミックから生じる、あらゆる新たなショックにも十分適応できるよう、確実に実施されるよう注意を払う必要がある(Samman 2020:3-4)。

 

誰もが助かるまで社会全体の安全はない

GMSでは今後、数十年にわたって移住は続くだろうし、それは今回の、あるいは別のパンデミックの帰趨とは関係のないことだ。GMS各地で雇用される何百万もの移民たちは、縁の下の力持ちとして農業や漁業、林業に従事し、食糧供給を支えている。建設業界では移民が絶えず我々のインフラを改善させ、運輸業や観光業、繊維業界、その他の見過ごされがちな基幹産業で就業する者もいる。その中には目下、現場でパンデミックと闘いながら働く人々もいる。

つまり、移民を対象に含む制度や戦略を通じて健康の公平性を実現することは、我々の社会全般のヘルス・セキュリティ(健康の安全保障)や復興、レジリエンス(回復力)の促進にとって非常に大切なのだ。非正規移民のための施策を支持する政策決定を慎重に行うことは、彼らの切実な要求を人権問題として捉え、これに応える上で大いに役に立つだろう。女性の経済回復を対策の中心に据えることは、長期的な経済回復を促す上でも極めて重要だ。最後になるが、移民が問題解決から切り離せない存在であることをしっかりと認識するべきだ。各国は彼らの貢献を最大限重視し、彼らを正規の存在とする手立てを探ることで、彼らの仕事の正当性を認めるべきなのだ。そうすれば、移民を送り出す国にも送金が入り、知識や技術が交換されることから利益が生まれる。一人一人の個人、しかも、あらゆるタイプの移民労働者の潜在力を結集して活用することが、最終的には今回の危機を脱するのに必要な万能薬をもたらす。つまり、これによって開かれた社会、平等で回復力の高い社会の構築が可能となるだろう。

 

2020年11月24日 公開 (2020年8月24日 脱稿)

翻訳 吉田千春および京都大学東南アジア地域研究研究所

 

参考文献

 

スラクシャ・チャンドラセカール(Suraksha Chandrasekhar):
国際移住機関(IOM)アジア太平洋地域事務所の緊急時保健医療支援コンサルタント。現在はIOMのアジア太平洋地域における新型コロナ関連の協力・対策活動に技術支援を行う。医学部卒業後まもなく、トマス・ジェファーソン大学(米国)にて災害医学と人道支援の修士号を取得、ニューヨークに渡って国連本部事務局に勤務。2018年のエボラ出血熱大流行の際には、同地で国連平和維持活動(PKO)局に技術支援と後方支援を行った。以前はアメリカ赤十字社(フィラデルフィア)とインドの現地NGO、ライフ・アゲイン基金で働き、災害管理、ジェンダーに基づく暴力とリプロダクティブ・ヘルスケア、人道上の緊急時における健康の権利と健康保険の推進などの分野に携わった。

モンティラ・インコチャサン(Montira Inkochasan):
応用行動科学の博士号を取得、国際移住機関(IOM)アジア太平洋地域事務所にて地域移民保健医療事業支援担当者を務める。14年間にわたり、アジア太平洋地域での移民保健医療に関する事業や活動を支えてきた。IOMのHIV、結核、マラリア、パンデミックや新興感染症に関する移民保健医療事業に技術支援を行っており、移民保健医療に関する主要なテーマやトピックに関する質の高い調査やインパクト評価、報告を通じて企画書やプレゼンテーション、レポートの作成を支援している。また、質的研究、量的研究、応用研究、モビリティと医療サービスのマッピング、国家、地域のレベルでの行動変容コミュニケーションを指揮、監督している。10年以上にわたり、社会、保健医療、教育、マーケティングといった幅広い問題や分野の研究活動に熱心に携わってきた。ラオスではIOM事務所と移住関連のプロジェクトを4年間管理、その後、IOMアジア太平洋地域事務所の移民保健医療部門に参入した。

パトリック・ドゥイガン(Patrick Duigan):
過去12年の間、移民保健医療の分野において様々な人道支援や開発の現場で活動してきた。現在はバンコクを拠点としてIOMアジア太平洋事務所の地域移民保健医療アドバイザーを務める。IOMの国別ミッションとして、各国政府や現地および地域とグローバルなパートナーに支援やアドバイスを提供し、アジア太平洋各地における移民保健医療計画の推進を図る。オーストラリアの医科大学を卒業、大学院生としてアデレード大学、ジェームズクック大学、リバプール熱帯医学校(LSHTM)にて公衆衛生、熱帯医学、人道支援、小児保健医療の研究に取り組んでいる。オーストラリア、パプアニューギニア、カンボジア、ミャンマー、ハイチ、フィリピン、ネパール、タイなど多くの国々で、結核、HIVおよびマラリア対策プログラム作成や、保健医療制度強化の取り組み、緊急時の対応と復興、移民医療政策の分析や開発など、様々な事業に携わってきた。移民保健医療に関する出版物も何点か共同執筆し、中にはBMJBritish Medical Journal)やSEARO(WHO東南アジア地域事務局)のJournal of Public Healthや、Health and Human Rights Journalに掲載されたものもある。

 

Citation

スラクシャ・チャンドラセカール、モンティラ・インコチャサン、パトリック・ドゥイガン(2020)「誰もが助かるまで社会全体の安全はない——大メコン圏(GMS)内の移住とCOVID-19」CSEAS Newsletter 4: TBC.