コロナウイルスのパンデミックが、フィリピンと世界に荒れ狂う中、ロドリゴ・R・ドゥテルテ大統領は、フィリピン最大の島、ルソン島に戒厳令を敷き、隔離措置の違反者に規律を叩きこむと言って脅した。「射殺しろ」。大統領は事前に軍と警察に対して、そうテレビ演説で指示した。「殺すんだ。大混乱を引き起こすなら、違反者を葬ってやるまでだ」。この発言は、メトロマニラのケソン市で、数名の抗議者たちが地方自治体に対して速やかに食糧支援を行うよう要求して逮捕されたことを受けたものだった(Gregorio 2020)。「皆に警告した。国軍と警察にも通達したが、戒厳令を敷くことになるだろう」。大統領は後にそう繰り返した。これはアウロラ(Aurora)州で、2人の兵士がNew People’s Army(NPA)の武装ゲリラに殺されたことが伝えられた後の発言だった(CNN Philippines 2020)。
ドゥテルテが戒厳令布告のために大統領権限を発動すると言って脅したのは、これが最初ではない。彼は大統領任期の前半に、(議会の承認を得て)南部ミンダナオ島の全域に2年半の軍事統制を敷き、ラナオ・デル・スール(Lanao del Sur)州のマラウィ市を占拠していたイスラム国(ISIS)系のテロリスト、マウテ・グループ(Maute group)を弾圧した(Gotinga 2019)。また、ドゥテルテが警察に「射殺」命令を出したのも、今回が初めてではない。2016年の就任以来、ドゥテルテ政権は血みどろの麻薬撲滅戦争を進めてきた。この結果、最近では約2万7,000件と推定される超法規的な殺害が報告されている(The Economist 2020)。例えば、ドゥテルテが直近の指示を出した数週間後に、ある一人の警察官が、元陸軍兵士で心的外傷後ストレス障害(PTSD)を抱える人物を隔離措置の違反容疑で撃ち殺した(Mangosing 2020)。
信頼できる評論家たちは、ドゥテルテが自由主義の原則を踏みにじっていると非難している。その理由として、ドゥテルテが裁判所を脅していること。これは大統領の協力者が最高裁判所長官マリア・ロウデルス・セレーノ(Maria Lourdes Sereno)を極めて異例な手法で解任したことに顕著にあらわれている。また、政府の独立機関(特に人権委員会とオンブズマン=行政監察院)に脅迫を試みていること。さらに、大統領の批判者を刑事事件で起訴するか、投獄しようと画策していること。特にレニー・ロブレド(Leni Robredo)副大統領とアントニオ・トリリャネス(Antonio Trillanes)上院議員は刑事告訴され、レイラ・デリマ(Leila de Lima)上院議員はすでに投獄された。そのうえ、メディアの口封じを試みていること。ラップラー(Rappler)とABS-CBNが弾圧された例がある。そして大企業を攻撃していること(アヤラ家(Ayala family)や大物実業家のマニー・パンギリナン(Manny Pangilinan)、ロペス家(Lopezes)などがターゲットとなっている)を挙げた(Thompson 2019;Pangue 2020;Reed 2020)。
だが、根強い支持者たちにとっては、ドゥテルテは彼らの「タタイ(tatay)」、つまり、お父さんであり、フィリピン国民の利益を第一に考える厳格な父親を体現している存在なのだ(Aquino 2019)。そのような支持者たちは「ポピュリスト」の有権者で、エリートや少数の特権支配階級が牛耳っていたといわれる前政権が進めていた自由改革主義の「偽善」に不満を抱き、腹を立て、疑念を抱く人々だ。あるドゥテルテ支持者の言葉が見事に表しているように「(我々が)ドゥテルテを支持するのは、(我々が)ドゥテルテだからだ」(Arguelles 2019:431)。
一部の観測筋は、現在も進行するCOVID-19パンデミックが、重大な世界的人道危機の中にあっても、剛腕独裁者たちにとっては、権力基盤と支配をさらに強めるための絶好のチャンスだと見ている(Lührmann et al. 2020)。事実、個人の自由を制限することと、致命的なウイルスの蔓延を阻止するため、政府が命令によって個人の自由を制限する必要性との間には、明らかなトレードオフ(二律背反)が存在する。けれども、特に国家によって一旦奪われた自由を取り戻すことは難しいだろう。現在の危機はドゥテルテをそそのかし、彼が大統領権限の境界をさらに踏みにじるよう仕向けるかもしれない。そのためにドゥテルテは、COVID-19危機に対処する特別権限を自らに授ける「団結して治療するバヤ二ハン(助け合い)法(Bayanihan to Heal as One Act)」という法律の特定条項を実施するかもしれないのだ(Holmes and Hutchcroft 2020)。
何週間もの間、警察や下級官僚、村役人たちが、この「助け合い」法の下に敷かれた、強化されたコミュニティ隔離措置(enhanced community quarantine)の違反者取り締まりを行ってきた。これまでに約13万人の隔離措置違反者が逮捕された(ABS-CBN 2020b)。隔離措置違反者が暴言や体罰にさらされていることも、一部の人権団体によって伝えられている(Castaneda 2020)。フィリピンのような開発途上国では、都市人口の大多数が狭苦しいスラム地区に住み、日雇い労働者として生計を立てているため、ソーシャル・ディスタンシングや在宅勤務などの措置は、フィリピン社会の中産階級、あるいは上流階級の特権となっている。貧困層や弱者の命を左右する政府の食糧支援や補助金の交付は遅々として進まず、時には届かなかったこともあり、彼らの間で飢えや絶望が生じ、大都市の社会秩序をさらに脅かすことになった(Gutierrez 2020)。ただ、警察が隔離措置の違反者を探して高級住宅地やマンションに押しかけていることも報じられており、富裕層が取り締まりを完全に免れているわけではない(ABS-CBN News 2020a;De Leon 2020)。
これまでに、国家捜査局(National Bureau of Investigation, NBI)は、政府のCOVID-19危機対応に反感を表明したソーシャルメディア・ユーザーに10件以上もの召喚状を出している(Patag 2020)。召喚状の根拠となる改正刑法第154条が処罰の対象としているのは、「公共秩序を危機にさらしかねない、あるいは国家の利益や信用を損ねる原因となる、あらゆる虚偽の情報」を発信することだ。「助け合い」法は3月26日に施行されたが、この第6項(6)の処罰対象は以下の通りである。「(COVID-19)危機に関する虚偽の情報をソーシャルメディア、その他のプラットフォーム上で作成し、公開を続け、拡散すること、そのような情報とは、国民に対して何ら有効かつ有益な趣旨も無く、その目的が明らかに混沌やパニック、無秩序、恐怖、あるいは混乱を引き起こすものをいう」(Buan 2020)。ただし、この虚偽の情報の定義は漠然としていて、情報が虚偽であるという判断は、法の執行人の気まぐれにかかっているのだ。フィリピン人の海外労働者(Overseas Filipino Workers, OFWs)はドゥテルテの主な支持基盤だが、彼らでさえ、この厳しい条項を免れない。台湾の台中に住む一人のフィリピン人介護士は、最近、他でもないフィリピン大使館の労働担当官から、本国に送還するため出頭せよと脅された。その容疑はサイバー上の名誉棄損で、彼女がソーシャルメディア上に反ドゥテルテの投稿をしたことが関係していた(Ramos 2020)。
COVID-19危機がもたらした不安や、この危機が過ぎた後の社会秩序に対する潜在的脅威を思えば、ドゥテルテには独裁的・専制的な大統領として強権的手法を振りかざす方が、単に楽なのかもしれない。だが、ドゥテルテは歴史の教訓を心に留めておかなくてはならない。時代をさかのぼれば、過去の大統領たちが大統領権限の境界を踏みにじった際、それには大きな政治的リスクが伴い、大統領の地位を犠牲にした例もあったからだ。
強い大統領という神話
政治制度として、フィリピン大統領の地位には「強い大統領」という公式的な外観を具えるだけの憲法上の権力が与えられてきた。そのためフィリピンでは、大統領の気まぐれにも従順で、社会的圧力に脆弱な弱い国家を強い大統領が支配してきたように思われる。フィリピンの大統領制は、ラテンアメリカの政治学者、ギジェルモ・オドンネル(O’Donnell 1994)が「委任型民主主義(delegative democracy)」と呼んだ明らかな事例だ。これにはアカウンタビリティ(説明責任)がほとんど無く、行政機関や治安部門の能力と専門性が限られており、国内外の有力な政治的アクターに対する自律性が欠けている。
だが、「強い社会、弱い国家(“strong societies, weak states”)」論(Migdal 1988)が答えを出していない問題がある。それは、なぜフィリピンなどの開発途上国では、強い大統領が弱い国家から出てくるのかという点だ。この学説はフィリピン民主主義に対する脅威を説明するものでもない。そのような脅威は、わずかな制約でさえ強引に乗り越えようとする独裁的、専制的大統領や、自由で公正な選挙で選ばれた大統領の存在を脅かす社会的エリートによってもたらされる。弱い国家は、社会からの十分な自律性を欠いているため、有力で戦略的なエリート集団が連帯すれば、彼らの意に沿わない大統領を失脚させることも可能なのだ。このような状況では、大統領はエリートの言いなりである。なぜかというと、国家機関に憲法上の手続きを擁護する力が無いためだ。弱い国家のもとでは、一時は「強い」と思われた大統領の地位でさえ、こうした社会的脅威に弱くなることがあるのだ。
近日出版される、筆者と香港城市大学(the City University of Hong Kong)のマーク・R・トンプソン(Mark R. Thompson)との共著で論じているのは、フィリピンの大統領が誰しも同様に強かったわけでなく、中には非合法な手段による失脚のリスクを負ってまでも、これを証明した者もいたということだ。一部の大統領は、エリートと軍部の力に対して脆弱であった。ポスト・マルコス期には、一人の大統領が追放され、他の2人は度重なるクーデターに見舞われた。これらのクーデターは、軍部の不満分子が企てたものだが、その背後には主要な政治家、経済界および宗教界の指導者、活動家がいた。同書では、ステファン・スコウロネクによるアメリカの大統領制に関する研究論文(Skowronek 1997,2010)を元に、時代ごとの状況に左右される大統領の地位についての関係理論が、弱い国家に当たるフィリピンでの大統領の強さと脆弱性に対して、より個別的な説明を与えることも議論した。
同書でのわれわれの主張は、フィリピンの大統領という存在は、一般に広まった政治的ナラティブ(物語)、有力エリート集団、主要国家機関から成る既存の政治構造(体制)と協調しながら、あるいはこれと対立しながら統治しているというものだ。ある大統領のその時代における立ち位置や政治構造のライフサイクルが、弱い国家の中で大統領の座がどれだけ「強い」あるいは「危うい」ものとなるかに強い影響を及ぼすのだ。ここで弱い国家というのは、大統領の気まぐれに従順であり、民主主義の規範が守られるか、損なわれるかを決める社会的圧力をもたない国のことだ。
ナラティブ、戦略グループ、国家
フィリピンにおける大統領の地位は、現在進行中の政治的ナラティブの前編とも、続編ともなり得る。この国にはイデオロギー論争的で政策志向的な政党が存在しないため、フィリピンにおける政治的ナラティブは「大統領の語る物語」のことである。これらのナラティブには、有力な利益集団の支持を集める役割があり、これらの集団の支援が大統領の地位を左右する。こうした集団の「最大のパトロン」を演じる「強い」フィリピンの大統領が「弱い」国家を支配できるのは、その他の政府部局への横方向のアカウンタビリティが限られているためでもあるし、政党が弱いために縦方向のアカウンタビリティも欠如しているからなのだ。ただし、国内の利益集団、特に軍部には自治権が比較的あり、そのために、大統領が国家機構そのものに対して最終的に行使・支配できる力は制限されている。
大統領が強い時というのは、彼らが明確な政治的ナラティブをもち、カトリック教会や経済界の特権的支配者、市民社会の活動家を含む有力な利益集団に支持され、主にはアメリカだが、中国も存在感を高めているように、社会的な課題に影響を与える外国勢力の承認や批判を受ける時だ。また、強い大統領は軍部を統率しており、仮に「逸脱的」な反自由主義の意向をもつ場合には、そうした大統領は自らの権限に対するわずかな制約でさえ、裁判所や議会、地方政治家の権力を損なうなどして、中央と地方の両方から取り除くことができる。「独裁的・専制的」大統領はしばしば、絶大なパトロネージ(経済的・政治的利益を提供する)の力と官僚支配を通じ、立法上、法律上のわずかな制約でさえ覆し、民主主義をさらに弱体化させたり、破壊することもある。
その一方で、一部の大統領は社会的な課題を解決する力が弱いことも証明されており、このような場合には大統領のディスコースの信頼性が落ち、エリート利益集団が大統領から離反し、軍部に対する統率力が失われ、議会や裁判所までもが大統領に敵対していた。たとえ大統領に個人的人気があったとしても、その時代の状況において不適切な立場に置かれれば、現体制に齟齬があることが明らかになり、これが体制に変革をもたらしうる。「立場の危うい」大統領は自身の政治的ナラティブが信頼されなくなる。ひどい不評を買う。大部分の経済界の支配者、カトリック教会の司教、主要な活動家たちの支持を失う。あるいは軍部に対する指揮権までをも失うかのどれかだ。
ナラティブの罠
ナラティブは、思想や出来事を意味のある形に紡いだ物語だ。全国キャンペーンを展開し、就任演説を行うことに始まり、大統領は説得力のある物語を語らなくてはならない。フィリピン政治の中で大統領制を支えているのは、選挙運動や統治シナリオの中の政策的というよりは感情的なナラティブである。これらのナラティブが戦略的利害をまとめている。大統領は体制に組み込まれていて、彼らのナラティブの信頼性は、この体制に照らして判断される。「ナラティブの罠」が生じるのは、統治シナリオの「物語」が政治の実情からあまりにもかけ離れている場合で、結果として、大統領は国内の極めて重要な利益集団の支持を失うか、激しい反感を招く。
独裁者フェルディナンド・マルコスが権力の座に就いて20年が経った後、彼の鉄のような支配を徐々に蝕んだのは、病に侵され弱々しく抜け殻のようになった絶対的指導者の姿であった。マルコスは「この国を再び偉大な国にする」という公約を守る代わりに、この国から好き勝手に金を巻き上げていた。またフィリピンで最初のポピュリスト大統領、“Erap para sa mahirap” 貧者の兄弟ジョセフ・エストラーダは、あと少しで貧困層の共感を得るところだった。それなのに、彼が古くからの大企業、財閥やカトリック教会などの最も重要な利益集団の支持を得られず、軍部や主要な市民社会団体の支持を失ったのは、一連の汚職スキャンダルが原因だった。マルコスとエストラーダの2人を失脚させたのは、ピープルパワーの蜂起だった。
グロリア・マカパガル・アロヨの「強い共和国」の建設というナラティブを台無しにしたのは、選挙違反と重大な汚職スキャンダルが告発されたためだ。人気連続テレビ番組の言葉を使うと、彼女はフィリピン政治の「コントラビーダ(kontrabida)」、尊大で欲望に満ちた悪者となったのだ。それでも、彼女はその激動の任期を、やりたい放題の情実・コネに始まり、優れた経済運営、危機的状況に対する巧みな手さばきによって乗り切った(Velasco and Saludo 2010)。
当初、アロヨの元学生で後継者でもあるノイノイ・アキノ(Noynoy Aquino)は、悪いことなど出来そうもないように思われた。ノイノイは「まっとうな道(matuwid na daan)」を歩み、汚職を一掃すると公約し、そのうえで貧困をも撲滅する(“kung walang corrupt, walang mahirap” 汚職が無ければ、貧困は無い)と主張していた。ところが、反汚職計画推進のための利益誘導型政治など、彼が動員したと見られるクライエンテリズム(恩顧主義)戦略は、彼の母親のコリー・アキノが1986年のエドゥサ(EDSA)革命、つまりピープルパワーの蜂起の後で打ち立てた自由改革主義体制の限界をさらけ出すこととなった。
自由改革主義体制が、本当に必要とされた社会・政治上の改革や、(特に刑事司法制度と災害対策に関する)国力を強化できなかったために、「怒りの政治(politics of anger)」に油が注がれ、ドゥテルテがこれを2016年の選挙にうまく利用することとなった(Teehankee and Thompson 2016)。ドゥテルテ(とアメリカのドナルド・トランプ)が体現している「劇場型ポピュリズム(performative populism)」というものは、テレビやデジタル・メディア時代のポピュリズムの一形態で、「演目のレパートリー」を活用して、役者である指導者と観客である支持者との関係を築くものだ(Moffitt 2016,2017;Magcamit and Arugay 2017)。ドゥテルテは「怒りの政治」をうまく利用したが、これに弾みを与えたのが有権者の漠然とした不満と、強い指導者によって法と秩序を回復しようとする要求が高まったことである。この怒りが形を得て、「本当の改革がやって来る(“tunay na pagbabago”)」と公約した反体制的で型破りな南部出身の市長を中心とする運動となった(Teehankee 2017)。
だが、以前の大統領たちと同じように、ドゥテルテは今、自分自身のナラティブの罠に直面している。皮肉にもノイノイ・アキノと同様、ドゥテルテは中間選挙で大勝利を収め、世論調査では人気が長続きし、高い支持率を得ている。そして同じようにドゥテルテにも、自分の政権のレガシーを脅かすような危機的状況の中で任期が迫ってきている。
COVID-19のパンデミック危機は、ドゥテルテと世界中のポピュリスト大統領にとって、未知の「敵」となった。「民衆」対「エリート」のナラティブを、ウイルスと生存の脅威に対して用い続けることは難しい。ウイルスを単純に「罰する」ことなど不可能なのだ。それに国民は恐れ、腹を空かせ、死んで行く。国際社会が武漢におけるウイルス大発生をめぐって中国の対応の不手際に対するアカウンタビリティと賠償まで要求しているような時に、ドゥテルテは彼の中国との緊密な関係を維持すると主張している。ドゥテルテの「射殺しろ」発言は、ソーシャルメディア上にかなりの反発を招いた。「#OustDuterte(#ドゥテルテを追放しろ)」は、世界中のTwitter上でもちきりとなった。これが約50万ツイートにのぼり、ドゥテルテのオンライン支持者たちを圧倒している(Tomacruz and Hapal 2020)。
それでもなお、熱心なドゥテルテ支持者たちは、彼が大統領に相応しい人物だと言い張る(Tiglao 2020)。ドゥテルテの新型感染症対策省庁間タスクフォース(Inter-Agency Task Force for the Management of Emerging Infectious Diseases, IATF-EID)を構成するのは、医師やテクノクラート、経済界の代表者たちで、これを率いるのは保健大臣だ。もう一つは、元軍事関係者たちから成るCOVID-19国家タスクフォース(the National Task Force (NTF) COVID-19)で、その任務は国家行動計画(the National Action Plan, NAP)を実施し、国内の悪性感染症拡大を防止することだ。ドゥテルテはコロナウイルスとの闘いに「軍部を投入し」、「規律を叩きこむ」と繰り返す(Tomacruz 2020)。彼のCOVID-19危機への対応が、ついにはエドゥサのナラティブを退けるものとなるか、それとも彼もまた一人の敗れたポピュリストとなるのか、それは時間が経ってみなければ分からない。
2020年8月6日 公開 (2020年4月28日 脱稿)
翻訳 吉田千春
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筆者紹介
ジュリオ・カブラル・ティーハンキ―(Julio Cabral Teehankee): フィリピン、マニラのデ・ラ・サール大学国際学科で政治学と国際関係論研究の教授を務める。本文執筆時には京都大学東南アジア地域研究研究所の客員教授。
Citation
ジュリオ・カブラル・ティーハンキ―(2020)「ドゥテルテのCOVID-19 ──フィリピン大統領の権威と矛盾──」CSEAS Newsletter 4: TBC.