2019年12月下旬、コロナウイルス(COVID-19)、すなわち重症急性呼吸器症候群(SARS-CoV-2)が引き起こす感染症が確認された。翌年1月には肺炎患者の集団発生が世界保健機関(WHO)により報告された。その後、人から人への感染が認められ、暴発的な集団感染の場となった中国・武漢市は3月23日に都市封鎖されたが、他国へのCOVID-19の拡大を防ぐことはできなかった。3月11日には地球規模での感染拡大が公表され、世界中あらゆる地域へ局所的な感染が広がった。
COVID-19の世界的流行はかつてない人的および経済的な被害をもたらし、限界にまで追い込まれた国々もあった。多くの都市、地域が封鎖措置下におかれ、国をまたいでの渡航は厳しく制限され、現代グローバルシステムは一時的に機能を停止した。事実、パンデミックにより人の活動は地球規模で混乱をきたし、国や地域によって異なる対応の脆さと強さを目の当たりにすることになった。そして2024年1月末現在、690万人以上の死亡が確認されている1。
当研究所(東南アジア地域研究研究所(CSEAS))も例にもれずこの未曽有の事態に多大な影響を受けるにおよび、私たちは「コロナ・クロニクル-現場からの声-」を立ち上げた。何が起きているのか捉えるためのプラットフォームを提供し、東南アジアをはじめとする各地から、当研究所にゆかりのある研究者たちのさまざまな視点と声を届けてきた。COVID-19が研究者自身のみならず個々人、コミュニティ、国家へどのような影響を及ぼしているか、最新の知見、分析、洞察を紹介する場となっている。さらには、各地から寄せられた異なる視点による学術的な分析のみならず、著述者、映像作家、ジャーナリスト、医療・保健の専門家などからの見解も歓迎し、多角的な視点からの発信による知見と対応を共有したい。
2024年1月30日更新(2021年8月23日初稿)
マリオ・ロペズ
岡本 正明
1. Coronavirus Death Toll, Worldometer https://www.worldometers.info/coronavirus/coronavirus-death-toll